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虐殺器官【小説】

 15,2011 21:48
SFっぽくない近未来SF小説。

「エヴァ」好き推奨。「雪風」ほど乾いておらず、「ブレラン」ほど汗と雨とオイルと血に塗れた肉弾戦でもなく、内容的には強烈なわりには、読後感はあいまい~な印象。でもタイトルからも知れるとおり、グロいとこも平気な人でないと非推奨Ψ(`∀´)Ψ】



虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
(2010/02/10)
伊藤 計劃

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本屋の店頭で見かけ、情報なにもなしでの表紙買いだったんですが、作者さんが夭折されておられたんですね。
残念です。

まだこの1冊しか読んでいませんが、日本SF界での評価は高い方だったようです。
著書自体数冊だけのようですが。
読破するには、要SF的イマジネーション。


以下、ネタバレ。







近未来SF。
シチュエーションは、911以降テロが激化し続け数十年、ついにサラエボで小規模戦術核爆弾が使用され数万人の命が失われた直後の世界。
しかし、逆にそのせいで、局地的な核の使用が可能なんだと、いろんな団体や国家が密かに認識してしまった後の世界ということになりますかね。

主人公は、相変わらず「世界の警察」を自認しているアメリカの、特殊暗殺部隊に所属するクラヴィス・シェパード大尉。
年齢書いてなかったかな?
20代後半な印象です。
碇シンジくんほどウザくはないが(笑)、あっち系の繊細なキャラクターです。

モラトリアムな大学生か???と思えるような、曖昧で、よく言えば繊細、悪く言えば優柔不断なシェパードさんの視点で、テロと虐殺が溢れる戦場と世界が描かれています。
淡々とエグイ描写が多く出てきますので、そういうの苦手な人にはしんどいかもですねぇ。
悲惨な状況の描写や戦闘中の殺害対象は、女子供も対象外ではありません。

「パリパリに焼けてチキンみたいな人間」という描写があって、思わずそれで「コックと泥棒、その妻と愛人」という映画を思い出しました(^^;
あれも、映画館前に貼ってあったポスターだけ見て、内容なにも知らずに見たら、もんのスゴイ映画だったんですが(笑)。

平和が保たれているようなアメリカ。
軍の命令のままに、感情も良心も「調整」され、罪悪感なく殺人を行っていく主人公。
命令によりターゲットを追う中で、彼は発展途上国に次々と虐殺の種をまいていくジョン・ポールという人物に出会い、人間として変わっていくわけですが。


個人的には「雪風」あたりのほうが好きなんですが、これはこれで面白かったです。

「虐殺の文法」あたりは、読む人によってはイメージしにくいかもしれないなぁと思いながら読んでいました。
いっそ集団催眠とか言っちゃうと判りやすいんだろうけど、それでは安っぽくなってしまうし、判りやすくなければならないということもないしね。
そして、このあたりがイメージしにくいと、話がわけわからんということになるでしょうねぇ(^^;

あと、オルタナとか、近未来設定の武器とか迷彩とかのあたりも、なかなかSF脳非対応な人にはわかりづらい。
まあ、SF脳非対応な人は、根本的にこの本を読もうとは思わないかもしれませんが(笑)。

身近な生活的には非常に現在のイメージに近いんですが、軍関係や戦闘関係になってくるとSF的になりますので、そのあたりのバランスが、描かれている世界を非常に近い将来のように感じさせます。


現実の911以降のアメリカを中心とする世界的なテロとの戦い。
安全のために、一般市民はどこまでプライバシーや個人情報の統制を犠牲にすればいいのか。
自国が平和なら、第三世界は内乱状態でもいいのか。
戦場で戦って人を殺し続ける兵士のPTSD。
他人の犠牲の上の平和を、平然と享受できるか。
そのあたりの、現実にすでにある問題を、極端に特化した近未来に置いて問題提議しているようです。

なかなか引っかかったら泥沼系な問題が多いのですが、主人公が一種ニュートラルな人なので、泥沼の上をさらーっと歩いて行くように話が進むんだな、これが(笑)。
表面的にさらっと読むか、1点1点深く考え込んで読むかで、非常に読書時間に差の出る本かと思います。

誰もが、自分の通った道や買ったものを政府にすべて把握されているような生活、IDがなければ家から出られないような生活を送っているわけですが、本当にそれはテロ抑止に効果があったのか?という問いには、作中明確に否という答えが出てきます。

ではなにがアメリカの平和を支えていたのか?
そのあたりがラストに詰められてくるわけですが、その結果の主人公の大ラスちゃぶ台返し!には、ちょっとびっくりしました(笑)。

つまり、お母さんのことと、ルツィアのことがなければ、君、そのちゃぶ台ひっくり返さなかったんじゃないの?的な(^^;

ジョン・ポールの非常に個人的な感情で、アメリカ以外の発展途上国は虐殺で大変なことになったけど、最後は主人公の超個人的な感情により、アメリカ内部がえらいことになったという(^^;(^^;(^^;

でも、結局のところ、その最後のちゃぶ台返しまでスムーズに納得させてしまう、通常こういうお話の主人公にはあまりなかったシェパードさんの曖昧でモラトリアムなキャラクター造形の勝利な気はしますね。


すでにガンとの闘病中であった作者が書かれた作品だったことを、読んでいる最中は知らなかったんですが、知って読むとまた印象が変わりそうかなと思う。

ちょっと経ったら、読み直してみることにします。



【追記】
ハリウッド映画に原作買われてもおかしくない感じなんだけど、ハリウッド映画になったらラストは変わるでしょうね(+_+)
アメリカ人が書くには向かない脚本だ。

ジョン・ポール役は、デヴィッド・ボウイとかダニエル・デイ・ルイスがぴったりではないかと!
ただし、二人とももうちょっと若い頃の、って注釈つきだけど(^^;
ああ、ヴィゴでもいいなぁ!



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