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重力ピエロ【小説】

 09,2009 00:10
血は水よりも濃いか?


重力ピエロ (新潮文庫)重力ピエロ (新潮文庫)
(2006/06)
伊坂 幸太郎

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再読了。
もともと読んではいたんですが、映画公開に合わせて読みなおそうと思ったら、一回目見に行く前には読了できず(^^;
二回目見に行く前に読み終わりました。
そーなんですよ。もう映画には2回も行ってしまったのです。ハマってます(笑)。

この話は、つまりは「血は水よりも濃いか?」という、ある家族の命題に関する物語であって、ミステリーというにはちょっと違うんだと思います。

伊坂さんは緻密な小説を書く方で、ついでに自分の小説世界がいろいろ繋がっている構成にしています。別の話のキャラクターが、違う話に出てきたりする。
「重力ピエロ」にも、「ラッシュライフ 」の黒澤さんや、「オーデュボンの祈り」の伊藤くんがちろっと出てきます。
↑黒澤さんは、ちろっとというか、結構がっつり話にかんでくるけど(笑)

伊坂さんの文章は、緻密すぎて鼻につくという人もいるかも。
感性というよりは、思考と構成の文章という感じ。何回か読むと、こんなとこまで考えられた伏線が張られていたのかと驚きます。
それでも、この「重力ピエロ」は、何冊か読んだ伊坂さんの小説の中では、感情に流れたタイプのものだと思う。
で、実は私は、伊坂さんの小説の中ではこの話が一番好きなんです。
あくまで今まで読んだ中で、だけど。

「重力ピエロ」は、突然降ってわいた不幸に見舞われた家族が、犬に噛まれたと思って忘れてしまえない現実を前にして、長い時間をどう生きて、どう考えていくかという物語を、長男・泉水(いずみ)の視線で描く小説。
そして物語の最後で、「血は水よりも濃いか?」という問いに、この家族は明確な答えを出します。
その答えに対して外野がなに言おうが知ったこっちゃねぇという潔さと、家族の二男に対する溺愛ぶりに、逆にこの家族にかかった外圧がどれほどのものだったのかということが垣間見えるという、やはりちょっと切ない物語ですね。

一人称の視点は長男ですが、この物語の核は二男の春くんです。
春が、すべての核であって、春と、その彼を取り巻く家族が魅力的であることがこのお話の魅力なんでしょうな。

だから、映画の春役である岡田将生くんは、苦労したと思うよ(^^;
本人、5キロ痩せたって言ってたけど。
だって、春がコケたら皆コケる話だもんな~Ψ(`∀´)Ψ

以下、完全ネタばれ御免。



泉水と春は兄弟だが、半分しか血がつながっていない。
お母さんが強姦されるという事件が起きて、その犯人の子供が春だからだ。
お父さんは、きちんと春を生んで育てようと決心し、両親とお兄ちゃんは春を愛して生きて行く。
だがある時、犯人が町に戻ってき、同時にその頃、同時に仙台の街のあちこちで放火事件が起きる。
泉水と春は、放火と壁の落書きの関連性に気づいて……。

というのが、話のあらましです。

春は、一風変わった青年で、原作では27歳。
誰もが振り返る美形だけど「性的なもの」を嫌っていて、ガンジー信者。自称ピカソの生まれ変わりで、絵が天才的にうまい。思想や話すことも独特。

映画化されると聞いたときに、一番最初に思ったのが「春、誰がやんの?」だったんですねぇ(笑)。
そのくらい、なんというか魅力的で独特なキャラなんです。
伊坂さんの小説には、特殊能力を持っている人や浮世離れした人がよく出てくるけど、この
小説には明らかにそういう人はいません。
けど多分、強いて言うなら春なんですな。

話の中で、泉水と春は、それぞれにレイプ犯(春にとっては遺伝子上の父親)を殺そうとします。
結局実行して成功するのはやっぱり春で、さんざん考え、悩み苦しんだ末の春の行為を、お父さんもお兄ちゃんも許容してしまうわけです。
この家族には、水のほうが血よりも濃い。
そう、はっきりと結論が出されます。

春が笑うと、うちの家族は幸せだった。

そういうお兄ちゃんの言葉があるんですね。
ふつうに読むと、春のほうが家族に強い愛情と思い入れを持っているように見えますが、なんのなんの。
家族も春を、ひそかに(?)溺愛です。

映画のコマーシャルにも大々的に取り上げられている「遺伝子暗号」も、たんに春が、遺伝子関係のお仕事をしているお兄ちゃんを自分の行動に巻き込みたいがために仕掛けるクイズのようなものなんですから、ミステリーとして期待してるとスカされます(^^;
ちょっとありえないほど仲がいい兄弟なんですが、これがまた少々切なかったりね。

全体的に理想的で、少々現実離れしている春の言動に首を傾げてしまうとちょっとつらいかもですが。
そんなこんなは置いといて、ひとつの家族のお話として読んでみるのがいいかも。
普通の家族とはいいがたいが(*^_^*)

読後、ガンジー、トルストイ、バタイユ、ゴダールあたりを、見たり読んだりしたくなりました。
ローランド・カークの音楽も聴きたかったけど、これはちょっとだけ映画の中でかかっていたんでした(笑)。

伊坂さんの作品に、あまりハズレはないです。
私は、この作品が一番おすすめだ!(≧▽≦)

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